黒正良(エロあり)




 後ろからのほうが自分に都合よく動けるので、機嫌の悪いときには後背位が多い。
 今日もそうだ。
 正守は傷だらけの背中をみおろしながら弟の尻に自分のそれをあてがい捩じこんだ。
 最初の悲鳴を、弟は枕を噛んでこらえた。それなりにワックスやジェルを使うのだが、痛いものは痛いらしい。ぴっちりと挟みこまれる正守もきついが、それも最初だけだ。動いているうちに、正守の意に添うように軟らかくなっていく。正守はその従順になっていく軟らかさをもてあそび、ふいうちに乱暴にゆさぶったり、ぎりぎりまで引き抜いてみたりするのだった。
 何度も手荒に抜き差しされてこらえきれなくたったのか、良守がとうとう声をあげた。
「あー…っ…っ…」
 弱く力ない良守の声は、苦痛をあらわすだけではなかった。ひ、ひゅ、と忙しなく息をつぐ間には、確かに快楽が混ざっていた。
 そのかすかな悦びの色が気にさわった。正守は傷だらけの背中に手をのばし、首の後ろに手をそわせた。良守はふいに触れた体温にふりかえろうとしたが、正守はそんな身体の動きをねじ伏せる強さでもって弟の身体を押さえつけた。
 兄のおおきな手に頭骨と頚骨をつかまれた良守は、さからう術もなく枕に顔をおしこめられてしまうのだった。
「勝手に動くな」
「…っだ…て…」
 正守はいらだつばかりでちっとも気持ちのよくないセックスをおわらせるため、弟の身体を深くうがった。二度三度とえぐると、良守のうち腿がびくびくと痙攣しだした。もうすぐにもイってしまうという時の良守の反応だ。痙攣は腹の中にも及び、含んだ正守ごと蠕動する。射精を促すように深く腰をやるのと一緒に、正守はとがって浮いた肩甲骨に舌を這わせた。正守の白い歯が良守の肉と骨とを噛んだ。
「…っ痛…や、なに、まさ…っん……っ…ぁ」
 良守の身体が背中の痛みにすくみあがる。正守はくちびるの端をにかりとつりあげ、さらに強く良守の背肉を食んだ。
「…っひ」
 噛まれる痛みと恐怖からのがれようと、良守の手足布団の上をはいずった。弟の嬌声が気に入らない正守だったが、逃げようとする良守の仕種はさらに癇に障った。どうにも許せない。思い知らせなければと、正守は弟のちいさな身体にのしかかって自分の雄をかなうかぎり奥まで、裂いてしまうのではないかと思えるような強さで深くふかく突き刺した。正守の下腹におしつぶされて良守の生白い尻がゆがんだ。
「…ーぁっ……っ…ぁ、ぁ…」
 正守の倣岸さに良守のもらした悲鳴はそれほど大きくなく、喉にひかっかるようなかすれたものだったが、そのぶん切迫した響きがあった。正守の与える痛みはよほど耐えがたいものらしい。だが苦痛が増すほどに良守のそこはきゅうきゅうと含まされた兄の欲を締めつけて、正守は腰骨のあたりにわだかまる熱を舌なめずりとともにふやすのだった。首を絞めながらヤると死ぬほどいい。どこで聞いた話だったか、下世話なものだと聞いたときの自分は思ったが、なんということはない、今似たようなことをしているではないか。
 それも実の弟に。
 正守はあいかわらず悪辣な笑みにつりあがったくちびるを良守の耳元に寄せた。
「良守、痛いか?」
「ぃた…い、よ…っ」
「そんなに?」
 言いざまに噛み千切る強さで良守の肉に歯をたてた。生臭く甘い血の香りが鼻にぬけた。
 良守の悲鳴は声にならなかった。
 先端をぴっちりとつつみこんだ肉が痛みに強くうねる。それにうながされるまま、正守は良守の幼い身体に射精した。腹のなかにぶちまけると良守が大変だというのはわかっているのだが、ではなんのために身体をつなげるのかと自分に問うてみたら、良守の身体に自分をつなげ、良守の腹の中に自分のそれを流し込みたいからという結論に至った。外に出しては実の弟にこうまで無体をはたらく意味がない。だから正守はいつも、良守がどんなにいやがろうとも全部をのませるのだった。
 正守はうすい背中に立てた歯をおさめ、最後のひとしずくをしごく為に腰をゆすった。
「ん…ぁ…あ…」
 まだ快楽を極めていない良守の脾肉がいじらしくまといついて来る。絞りとられるようなその動きは快かった。ぜんぶだしきって引き抜くと、正守の性器の容量にならされた良守の尻の肉はすぐには口を閉じられず、常なら目に触れることもないピンク色をした内蔵が蛍光灯にしらじらと照らされていた。そこにからむつやつやと白っぽい粘液は良守のために使ったジェルに正守の白濁が混ざったものだろう。いくら奥深くに吐き出してもまだ腰の細い良守の内はせまく、すぐにあふれてきてしまうのだった。
 正守の無遠慮な視線をかんじたのか良守がみじろいだ。それでようやく良守のすぼまりは閉じたのだが、すぐさまおさまりきらなかった青臭いジェルがくぷんとあふれてきた。
「…ぁっ…」
 尻の隙間からうち腿へと垂れていく感触に、いまだ熱のこもったままの良守がたまらずあえいだ。受身のセックスを教えこまれ馴らされた良守の身体は後ろでの快楽のほうをより悦ぶ。いまも正守の視線の先では、腫れぼったい小さな口がとどめを欲しがってひくひくと収縮している。淫猥な動きだ。それをそのまま弟に伝えると、良守は首の後ろまで赤くして恥ずかしがった。
 いまさらなにを恥ずかしがるのか。小さいお前のオムツをとりかえたのはお兄ちゃんだぜ。
 そう嬲ろうと思ったがやめた。泣かせて楽しむのはもっと自分に余裕のあるときがいい。今はゆっくり風呂に入って眠ってしまいたかった。
 正守は射精のもたらす疲労感にため息をつくと布団から立ち上がった。
「まさ…」
 弟のすがるような視線が追いかけてくるのを知っていて、正守はわざと一瞥もくれずに部屋をあとにした。


2007・05・27 改稿
5月半ばあたりに書いたのを手直し。せっかく(?)18禁表記をしたんだからエロいのださなくちゃとがんばりました。でもエロいっていうよりこれイタイような、あははー(誤魔化しとけ)。
よしくんはこんな兄ちゃんをもって大変ですね。